身近な人間関係の不満は日々の生活の中で少しずつたまっていきがちです。お互いの性格や考え方はわかっていると思い、「言わなくてもわかるはず」「これくらい察してよ」と考えて伝える努力をしなくなっていきます。確かに言わなくても済むことも数多くありますが、「正直に感じたこと」を言葉にしないままでいると、いくつもの小さな不満の種が重なって、相手との関係をこじらせる原因になります。

 

小さな不満であればちょっとした話し合いの時間を持つことで乗り越えられますが、大爆発してからの関係修復には時間もエネルギーもかかります。関係が悪化したとき相手をどう理解し、将来に向けて自分の気持ちに折り合いいをつけていくことができるのでしょうか。関係を修復するには、私たち自身は何をすればよいのでしょうか。お互いに納得できる地点に到達することはできるのでしょうか。どちらが正しいかのいがみ合いをするのではなく、本当にお互いのためを思って、お互いを大切にした関係をつくることは可能なのでしょうか。

 

 

自分の考えること、感じること、希望していることを、自分も相手も尊重したやり方で表現する。伝え方を工夫することで、相手への伝わり方は変わります。ただ自分の言いたいことは確かに伝わるようになりますが、伝わるようにすることが目的ではありません。

 

 

「私たちを健康に幸福にするのは、良い人間関係に尽きる」
身近な関係の中で生まれる様々な感情、複雑で理解の難しい「人間」という存在と、その人間同士の関係で生じる複雑さや微妙さ。言葉にできない思いや感情を面倒くさいと避けたり、相手との関係を切る理由にしたりするのではなく、互いの信頼関係という土台を築いていこうとすることが、最終的には自分の幸福につながると強く思います。

 

 

ことばでどう表現するかは、結果にすぎません。大事なのは言葉に出す「前」の自分のありようです。
どう伝えるかの「前」に、自分の気持ちに正直に向き合うこと、
相手に何かを言おうとする「前」に、相手のことを心から考えることが、お互いの関係に大きなインパクトを与えるという事。

 

 

すべては「良い関係を築く」と言う選択から始まる。

 

わたしはあの人との関係で何を望んでいるのだろうか。
自分はどうしたいのだろうか。

 

「自分も相手も大切にできる関係」をつくるには、
❶自分に誠実になること：私は何を望んでいるのだろうか。自分自身に問いかけてください。その答えが自分の望むこと、それを大切にします。
❷相手が望んでいることを考える：思い込みは斜めに構えることから離れて相手の希望は何かと考えてみてください。わからなくても想像してみてください。想像することが第一歩です。
❸自分も相手も望んでいることに向かって、小さな行動を毎日積み重ねること

 

 

相手を変えようとするとしんどくなる。
「悪いのは相手だ。自分は悪くない」関係が悪化するほど、問題の原因を相手に求めがちです。
「相手が100％悪い」と考えると、相手が変わらない限り問題が解決しないことになり。相手の状況に振り回されることになります。解決するには自分が変わることの数十倍、数百倍、時間も労力もかかってしまいます。相手に原因を求めて解決しようとするよりも、自分の側が変えられるもの（相手に対する見方、向き合う姿勢、関わり方、コミュニケーションの取り方など）に時間をかける方が、エネルギーも時間を少なくて済みます。

 

 

自分が変わるとは、どういうことなのか。自分だけが我慢することではありません。相手を大切にすることと同じくらい、自分の気持ちを大切にする。自分にウソをつかないで正直になるということです。

 

I messageで伝える伝え方。
1⃣「人」ではなく「コト」にフォーカスする＝起こった事実を伝える

「あなたが■■だから私は●●だ」（you messege)ではなく「互いの関係で今◆◆ということが起きている。それを私は心配している」
2⃣自分の正直な気持ちを相手を責めずに伝える＝あなたと良い関係をつくりたいから正直に気持ちを話すね、と肯定的に話し始める。相手に理解してもらいやすくなる。
3⃣自分の望みを伝える＝ネガティブな感情だけを伝えて終わらせないようにする。「ショックだった。話し合う時間をとってから一緒に決めたい」など「だから自分は何を望むのか」を明確に言葉にする。

「私が●●するのは（あなたの行為によって）わたしが▲▲という気持ちがするからだ」
「私は本当はこうしたい」と気持ちが伝わる言い方を考える。そのために
❶相手の善意やメッセージを受け止める❷自分の状況を説明して「（相手の行為に対するNO！」の理由を伝える❸代替案、関係をつなぐひと言を添える。

 

 

相手を大切にするとは、相手を自分の「そうあるべき」フィルターを通さずに見ること。そのままの相手として受け止めること。
●自分がどう満足するか、ではなく「相手が本当に望んでいることは何か」を考える
●相手の望みをそのまま受け止める
●相手が望んでいることを理解して、自分が意地を張ることをやめる
●相手の気持ちを「自分が変えられる」と考えることをやめる
●相手には相手のストーリーがあることを受け止める
●そのうえで自分ができることを毎日ひとつだけやる

 

相手にこうあってほしい、という自分のコントロール欲望をいったん捨てる
自分の見えている世界が「正しい」ものではなくて、相手には相手の見えている世界があり、ストーリーがある。それを変えることはできない。だからただ、相手を対等な人間として「受け止める」

自分が大切にしたいことは何だろうかと、自分に問うてみる。表面的なことではなく、3年後、5年後、10年後互いの関係がどんなものだったらよいだろうかと考えてみる。